子どもは親の行動を見ている
きちんと勉強する子どもと、そうでない子どもの差は何でしょうか。その差を生み出す要因はたくさんあると思いますが、今回は「家庭の学習環境」に注目してみたいと思います。というのも、多くの教育現場や調査で、家庭の学習環境(特に保護者の姿勢)が子どもの学力や学習習慣に強い影響を与えることが示されているからです。家庭の学習環境と言っても、それは単に机や教材が整っていることだけを指すのではありません。むしろ、その環境の核となるのは、共に生活する大人が日頃からどのような姿勢で物事に向き合っているかという点にあります。もちろん、これは「親が常に教科書を開いて受験勉強のような学習をしなければならない」という意味ではありません。ここでの「勉強」とは、もっと広い意味での「知的な活動への関心や、学び続ける姿勢」を指しています。
文部科学省が実施している「全国学力・学習状況調査」の保護者向けアンケートなどを見ても、家に本や新聞が多く、保護者が日常的に読書をしたり、ニュースについて子どもと話し合ったりしている家庭ほど、子どもの学力が高い傾向にあることが分かっています。子どもは親の言葉以上に「行動」をよく見ているものです。親がスマホやテレビばかりに時間を費やしている横で、「勉強しなさい!」といくら声を荒らげても、子どもにしてみれば説得力がありません。「大人はずるい、自分だけなぜ辛い思いをしなければならないのか」と反発心を生む原因にもなってしまいます。
学びの楽しさを実感できる空間
では、忙しい日常の中で、保護者はどのような姿を見せればよいのでしょうか。何も難しい資格試験の勉強を始める必要はありません。例えば、以下のような小さな「学びの姿勢」を共有することから始めてみてはいかがでしょうか。①読書をする姿を見せる
小説でも、仕事に必要なビジネス書でも、実用書でも構いません。親が活字に親しんでいる姿を見ることで、子どもにとって「本を読むこと」が特別なことではなく、日常の当たり前の風景になります。俳優の芦田愛菜さんは、幼い頃から大変な読書家ですが、それはご両親の習慣が影響しているそうです。彼女の家では、リビングなどに常に本が置いてあり、ご両親も日常的に本を読んでいたといいます。特別な英才教育ではなく、『親が楽しそうに読んでいるから、自分も手に取ってみる』という、ごく自然な流れが、彼女の知的好奇心を育てたのでしょう。
②「調べる姿」を共有する
日常で分からないことに出会ったとき、「お父さんも分からないから、一緒に調べてみよう」と、辞書や図鑑、あるいはインターネットを使って熱心に調べる様子を見せることです。知識を得るプロセスの楽しさを背中で教えることができます。ニュースキャスターとしても活躍する櫻井翔さんは、幼い頃から『父親がリビングで黙々と新聞を読んでいる姿』を毎日見て育ったそうです。父親から『新聞を読め』と言われたことは一度もなかったそうですが、親が社会の出来事に目を通す姿を当たり前の景色として見ていたことが、後の彼の知的な活動の土台になったといいます。
③大人の学び直しを楽しむ
ニュースを熱心に見る、語学や趣味の講座を受けるなど、「大人になっても新しいことを知るのは楽しい」という前向きな態度を示すことです。あるお母さんは、中学生の息子と一緒に英検を受けましたが、自分だけ不合格になってしまいました。普通なら恥ずかしくて隠してしまいそうな場面ですが、彼女は『悔しいからもう一回頑張るわ』と、リビングでまた参考書を広げたそうです。それを見た息子さんは、親が失敗しても腐らずにリベンジする姿に衝撃を受けました。それ以来、息子さんはテストの点数が悪くても隠さず、次はどうすればいいかを前向きに相談するようになったといいます。
積極的に学習環境を作っていく
子どもに「勉強を強制する」のではなく、家庭全体を「学びが自然に存在する場所」にしましょう。親が自らの知的好奇心を少しだけオープンにすることで、子どもの学習に対する心理的ハードルは驚くほど下がります。スマホを見る代わりに一冊の本を手に取る、「勉強しなさい」と言う代わりに「これ、知ってる?」と興味を持ちそうな話題を語りかける、そういった小さなことから始めてみるといいのではないでしょうか。